『ストロゥヘヴン』


 夜中よりも朝の方が冷えて感じるのは、隣に誰もいないからなのかもしれない。リサと朝まで一緒にいたことはなかったが、ふと、そんな風に考えてしまった。
 眠い目を擦り、布団から抜け出る。窓の外はまだ仄暗く、かなりの早朝だということが窺い知れた。時計を見る必要はないだろう。
 僕はまだ、夜に酔い続けている。リサに、酔い続けている。
 今から学校に向かっても早過ぎるのは明白だったが、いつまでも部屋の中に居続ける気にはなれそうにない。部屋の中はあまりにも夜の匂いが強く、僕を現実に引き戻してはくれなかった。
 冷え切った部屋の中で中学校の制服に着替え、意味のない夜の幻想を振り払う。リサとの関係は太陽の下では意味を成さない。僕たちの絆は日の光に当たると見えなくなるような、儚いものなのだから。
 リサはきちんと起きられただろうか。ふいに、そんな疑問が頭をぎる。どちらであれ、干渉のしようがないことだというのに。
 夜中に毎日会っているにも関わらず、僕たちはお互いの連絡先を知らなかった。必要がないから教えない。確かに、その考えは間違いではないだろう。繋がりが明らかにならない方が、僕のためだというのも判っている。しかし。
 いや、その考えが間違いなのだ。僕たちは恋人同士でも何でもない。ただの“共犯者”でしかないのだから。
 共犯者。共に犯す者。罪を、ともに。
 リサの一方的な支配下に於いても、共犯と呼べるのだろうか。自虐ともとれる疑問が頭をもたげる。隠すことに協力はしたが、それ以前の行動は全てリサのしたことだ。僕は何一つ、手を貸してはいない。使った労力も罪の重さも、リサと僕とでは比べ物にならないはずで。
 僕は巻き込まれただけの、言わば被害者のようなものなのだ。本来であれば。
 けれども。それを理解していてもなお。リサを護らなければいけないという強迫観念に、今の僕はさいなまれている。
 自らの口で“共犯者”と名乗ったときから、決まっていたのかもしれない。


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